2009/11/30

重いものは持ち上げずに転がせばいいんです

親友 アレックス リッチ から展覧会のインヴィテーションが届いた。今回は コンスタンチン グルチッチ がキュレーターを務める展覧会の会場やグラフィックのデザインを ヨルグ レニ(ヘクター) と共に手掛けたようだ。http://www.design-real.com/
ウェブをざっと流し見したところ、いわゆるグッドデザインキュレーション(正直、それほど面白みのないセレクション)なので、見せ方が肝だろう。一点だけ興味深いプロダクトがあった。水タンク。人々が頭の上に水瓶をのせて歩いているアフリカの風景は、近く失われることになるのだろう。社会問題の解決を目的とした正しきプロダクト。目新しい携帯や家電をデザインしてもてはやされている日本の人気デザイナー達とは大違い。残念ながら、近年デザイナーという肩書がどうも胡散臭く感じるようになってしまった。http://www.youtube.com/watch?v=HPCTscerVvI&feature=player_embedded

2009/11/27

牡蠣と柿は同じ季節に旨いので紛らわしいのです

牡蠣の季節ですね。
この時期には、銀座にある三州屋という定食屋の牡蠣フライを食べるのです。この店はなかなか良いのです。ランチ時の混雑は避けなくてはなりません。素朴な家庭料理を肴に一杯。おばちゃん達の素っ気無くかつ温かい接客がまたいいのです。あの客あしらいは、おそらく元ホステスなのではないかと睨んでいます。

2009/11/23

色を配さない空間はカラーで撮影してもモノクロ写真のようです

今年の秋は、100% DESIGN TOKYO 内の BLICKFANG ブースのデザインを担当しました。世界的な悪景気の影響で、来日出展クリエーターの数が激減し、規模も予算も大幅に縮小。
どの業界でも同じだと思うが、低予算の仕事というのは、非常に難しい。予算が少ない分、選択肢が狭まる。それを補う為に、様々な工夫や労力が必要とされる。反面、予算の豊富な仕事は楽だ。余計な心配なくベストな選択肢を取ればいい。
今年のブリックファングのブースは、全体を黒く覆って、クリエーターの等身大写真を壁面に配置しただけ。クリエーター自らがその場に立ち、作品のプレゼンテーションを行っている事。アマチュアによるフリーマーケットではなく、プロフェッショナルによるプレゼンテーションである事。この2点を静かに表現した空間。

2009/11/20

大きな鼠さんは、クリスマスキャロルという西洋物語を餌に子供達を狙っているようです

年の瀬の物語といえば、日本では「忠臣蔵」がお決まりです。ってことで、歌舞伎座へ「仮名手本忠臣蔵」を観に行ってきました。
実際の討ち入りのあったのは1701年、その2年後の1703年には既に物語として上演されたというのだから、この事件への注目度が当時より高かったことがうかがえる。その後、今日に至るまで300年以上に渡って、人気が衰えないのだから凄い。映画、小説、テレビドラマ、数え切れぬ程膨大な数の作品が繰り返し作られ、飽きられることなく人気を博してきた。この忠義美談は、日本人の国民性形成に大きく寄与してきたに違いない。

この「仮名手本忠臣蔵」、その名の通り登場人物はすべて仮名で演じられている。江戸幕府がこの実話の上演を禁じた為に、仮名を充てたのだという。当時の歌舞伎が、今日のように保守的な伝統芸能でなく、反体制的な姿勢を有した庶民の文化であった事がうかがえる。

2009/11/15

水族館って結構臭いんですね

天皇陛下御在位20年記念ということで葛西臨海水族園がこっそりと無料開放していたので訪れてみた。(どの動物園や美術館も、何故もっと盛大に告知して祝わないのか?)
谷口吉生という建築家による大仰な近代建築物の中に入ると、展示物は期待に反してしょぼい。水槽の水はどれも濁っているし、換気設備の故障なのか館内は何故かレストランの食べ物の臭いと餌糞の臭いとが入り混じって充満している
。大した工夫も、驚くような希少生物も、無い。唯一印象に残るのは旨そうなマグロが泳いでいたことぐらい。
ご立派な建物に、貧相なコンテンツ。あれじゃまるで、中身の空っぽな二枚目なのである。

2009/11/13

西郷隆盛は知らん顔でお散歩中

上野の森美術館へ「聖地チベット展」を観に出かけた。
中国による侵略によって大部分は、焼かれ、破壊され、盗まれた、という貴重なチベットの文化遺産が、この日本で観られるというのだから逃す手はない。展示されている仏像や仏画は、豊かな色と表情に溢れていて、とても人間らしい。俗っぽささえ感じるのだ。これは、チベット仏教が庶民に根付いている証だろう。お経を覚えていなくたって大丈夫。マニ車なる便利な道具を回せばお経を唱える代わりになるという。これなら子供だってグルグル回せる。中国を経由して日本へ伝わったお偉い仏教文化とは、大きな違いだ。
ところで、一部の人権活動家はこの展覧会に対し強い批難声明を発している。実はこの展覧会、中国が主催しているのだ。チベットを略奪した中国がである。この事実を知ると、確かに複雑な気持ちになる。しかし、これを機にチベット文化に触れ、その悲劇的な歴史を知る(会場では中国による侵略については一切触れられていないのだが)人々が多くいることは、決して悪いことではないと思うのである。

2009/11/09

埃の中から発掘された最先端デザイン

チェコのデザイナー、マキシム ヴェルチョフスキー と久しぶりの再会。
オーストリアの高級シャンデリアメーカー、ロブマイヤーの為に制作した近作はとても興味深い。クリスタルガラスを透過する光で都市の風景を浮かび上がらせるというもの。ロブマイヤーの倉庫を訪れ、雑然と積み上げられたガラスパーツの中から適した形状のパーツを一つ一つ選び出していったという。一つの風景を作り出すのに一週間、全四都市で約一か月を要したというのだから、根気のいる作業だ。完成した作品は実にお見事。ロンドン、ニューヨーク、モスクワ、メディナ、が幻影のように儚い姿を現していた。先日の100% DESIGN TOKYO 会場の片隅で、ロンドンの風景が密やかに展示されていた事に注意深い人は気づいただろう。つまらぬ商業デザインが溢れる中で、一際輝いていた。
倉庫で埃を被ったガラクタのようなパーツ達を、緻密に組み合わせ、巧妙に配置する。それだけで、全く新しい美と価値を創造する。不用意に新たな物を作り出すこと無しに。
チェコの民主化革命、ベルリンの壁崩壊、から20年(まだたった20年)、マキシムを筆頭とした新世代東欧デザイナーの活躍に注目期待したい。
http://designeast.eu/2008/11/09/maxim-velcovsky-studio-qubus-for-lobmeyr/

2009/11/07

殺され肉をえぐり取られた動物達

ガラスケースに収められた狐の死体、狸の死体、てんの死体、いたちの死体、死体、死体、、、。剥製にして飾られる為だけに捕えられ、殺され、肉をえぐり取られた動物達。
寿命を全うして死んだ動物を懐かしむ為につくられる剥製ならまだましだ。今年初めにはかつて上野動物園を賑わせた歴代パンダの死体(剥製)展なんて物凄い企画展もあったし、近年ではペットの猫や犬を剥製にする心優しい飼い主も多いようだ。レーニンや毛沢東も剥製になって国民を喜ばせている。

2009/11/02

仏は宙に浮いてなどいない、この地にしっかりと足をつけている

ダライラマ14世の講演を訪れた。
あの生き仏、ダライラマである。中国によるチベット侵略、大虐殺を生き延び、インドへと亡命したダライラマなのである。とても現実とは思い難い壮絶な運命を生きた本人が、我々と同じこの時代に生きていて、この東京で講演を行っているのである。この現実だけで十分に感慨深い。
客入りは予想に反して少なく、国技館客席の3分の1も埋まっていない。中途半端なアイドルにも及ばない集客力に愕然とさせられた。あのダライラマがこれ程人気が低いとは。
今回の講演は、他の出演者4人とのトーク形式のものであった為に、ダライラマの法談を満喫するには至らぬ消化不良の内容であった。しかし、ダライラマの人となり(天上の仏でなく)をこの目で垣間見れたことだけで、十分に有意義に思える。ダライラマの言葉は極めて科学的であり、人間的であり、現代的であり、現実的であり、理論的であり、常識的であった。決して宗教論を持ち出して煙に巻くことは無かった。
何よりもあの独特の笑いが忘れられない。生き仏の口から頻繁に飛び出す、皮肉交じりの冗談。講演の最後は共演者へのプレゼント授与で締めくくられたのだが(本来こんなことは控室で行ってほしいものだが)、そこで述べられた言葉はダライラマの現実感覚を象徴している。「白いスカーフをプレゼントします。感謝の意を込めてスカーフを贈るというのはインドの古い習慣です。しかしながらこのスカーフは中国で中国人(漢人)によってつくられたものです。イッヒヒヒヒ。そしてそこには中国人には読めない大切な言葉がチベット語で書かれているのです。イッヒヒヒヒヒヒヒ。」
ダライラマから政治的な発言は一言も無かった(許されていないのだろう)。オバマ大統領も鳩山首相も国家元首になった途端、ダライラマとの会談を控えた。両者とも経済大国中国を前にして、良心を押し殺した(オバマはノーベル平和賞を受賞する資格が無い事を自身で十分に認識しているだろう)。来日報道も僅かだけである。しかし、チベットでは今でも深刻な人権侵害が行われている。

http://www.youtube.com/watch?v=P5sWncFiYnA